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アンパンマンが忙しい世の中。

 先日、漫画家のやなせたかしさんがお亡くなりになられました。やなせさんといえば、日本人では知らない人がいない、まさに誰もが知っているヒーロー、アンパンマンの生みの親。心からお悔やみ申し上げます

 アンパンマンは異質のヒーローである。どこの世界に自分の顔を食べさせるヒーローがいるだろうか?アンパンマンがお腹をすかせて苦しむ人、困っている人等に、自分の顔を差し出すのを見て、誰もが度肝を抜かれただろう。自分の顔を食べさせるのだ。すごいヒーローだ。よくぞこの様なヒーローを思いついたものだと思うのだが…その誕生には悲しいものがある。やなせさんは従軍経験があり、そこでかなりのひもじさを体験したとのこと。やなせさんが「行軍したり、泥だらけになってはい回ったりするのは、一晩寝ればなんとかなる。ところが、飢えはどうしても我慢できない」と言っていることからも、いかに空腹を味わったのかが伺える。だが、その想像を絶するひもじさが異色のヒーローを生み出すこととなる。「逆転しない正義とは献身と愛だ。それも決して大げさなことではなく、眼の前で餓死しそうな人がいるとすれば、その人に一片のパンを与えること」「本当の正義は人を殺すことじゃない。ミサイルを撃ち込むことでもない。そこにひもじい人がいれば、それを助けることだ」ここに、ひもじい人を救うために自らの顔を差し出すヒーロー、アンパンマンの根幹があると思う。そして「世界中にはひもじい子ども、飢えた人がたくさんいる。もし、正義の味方なのだったら、まずひもじい人を助けるほうが先じゃないか。それが、ヒーローとして正しいのではないかと思ったわけです」そう、アンパンマンの誕生である。

 人を助けるとはどういうことだろう?どうも昨今、大義名分だけの人助けや、何やら大味な「○○のため」といった行動を多く見かけるような気がする。パッと聞くと、なにやらすごいことをしているように聞こえたり、「○○のため」に尽力しているような感じがするのだが…じゃあ具体的に、それで誰がどう、どれくらい助かるのか?ということがさっぱり見えてこない。以前、私の同僚に「学生さんのために…」とよく口にする輩がいた。では、その同僚が学生さんのために具体的に何をしているのかというと…それがさっぱり分からなかったし、見えてこなかった。いや、それどころか、どう見ても「学生さんのためによくないこと」ばかりしていたような気がする。 

 「人を助ける」「人のために」とはどういうことなのだろう?それをアンパンマンは教えてくれているようなきがする。やなせさんはこういっている。「いま食べられない人を空腹から助けることこそ本当の正義だ」と。そこには雄大な展望も、壮大なる人類愛をほのめかすキレイごとなど何もない。「空腹な人に食べさせる。これが正義」この言葉こそ、まっとうな人助けや正義というものを表しているのではないだろうか?そう、人助けや正義には大義名分などいらないのだ。時に大義名分は人を助けない理由にもなる。形にはまった枠を作り、その枠に当てはまらないから、助けない。大義名分を振りかざせば振りかざすほど、その大義名分からそれる人間は見捨てられる。人間が何度も、そして今もって堂々と行っている姑息な保身。そんなもの、人助けでも正義でもなんでもない。しかし悲しいかな、そのような「人を助ける」「人のために」が横行しているのが、今の日本の現状なのである。

 往々にして、「人を助ける」「人のために」と、あたかも多くの人のためにと振る舞った場合、その陰で少数の人間が泣いているのも事実である。多くを助けているように振舞えば振舞うほど、陰で泣く人の数は増えていく。その少数を救わなくてもいい大義名分…こちらも、いくらでも吐くことができるのだ。その大義名分を錦の御旗にかざして、もっともらしくその陰で泣く少数を切り捨てていく。不思議なものである。多くの人を救うために、少数の人を救わない。それでいて、いかにも人助けをしているように振舞っている。〝シンドラーのリスト〟という映画の台詞に「一人の人間を救うものは世界を救う」という言葉があった。まさに、この通りだと思うのだが…。

 アンパンマン以外のヒーローは、正義を口にするが、飢えや空腹に苦しむ人間へ手をさしのべることはしなかった。そして、正義の名の下に怪獣と戦ったり、悪の組織と戦ったりで大忙しである。だからアンパンマンは、お腹をすかせて苦しむ人困っている人、悲しんで泣いている人に、あんパンでできた自分の顔を差し出し、多くの人を助けている。アンパンマンが出来ること。自分の顔を食べさせてあげること。そう、自分がしてあげられることして、人を助けてあげることこそが、大義名分などいらない本当の正義なのだ。身近な、そして純粋なヒーローであるアンパンマン。「とにかく元気でくじけないで。きっとアンパンマンが助けに行くからね」と日夜、激しく飛び回っているのだ。特に昨今の「似非正義」や「人を切り捨てる人助け」が横行している日本では、困っている人、悲しんで泣いている人など、それこそ星の数ほどいるであろう。そんな、日本を激しく飛び回っているであろうアンパンマン。彼が誕生してから40年近くなるが…将来、こんなに忙しくなろうとは夢にも思っていなかったのではないだろうか?

 

 

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