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インチキ薬剤師。

 批評家は自らの「好き嫌い」を「是非曲直」のオブラートに包んで差し出すところのインチキ薬剤師である。中身は要するに彼の「好き嫌い」に過ぎない。

 林達夫氏の言った言葉。林達夫氏は、日本の思想家、評論家として活躍された方で、岩波文庫の「ファーブル昆虫記」の翻訳者としても有名な方です。常に人間の精神に深く根ざした批評を書かれたそうで、政治・思想・文化の動向には鋭い批判をしたということです。私的には、この言葉を見た時は一瞬ドキッとしたのですが…。インチキ薬剤師…。まあ、その後読んでみると、決して薬剤師の事を悪く言っている訳ではないことが分かったのですが…やはり薬剤師という言葉に〝インチキ〟などという言葉が付くと、ちょっとビックリしてしまいます。前述のように、林達夫氏は「鋭い批判をした」ということですから、表現もダイレクトに心に響くものとなったのでしょう。

 文中にある〝是非曲直〟とは「物事の善悪・正不正」のこと。つまり「批評家は単に自分の好き嫌いに過ぎないことを、物事の善悪にこじつけたり、正しい・正しくないといったレッテルを貼って、もっともらしく判断しているに過ぎない」と言っている訳です。もっと簡単に言うなら「単なる個人的見解・感情を、理由(屁理屈?)をつけて、もっともらしい正論にしている」ということ。自らも評論家である林氏は、いい加減な評論家が適当なことばかり物々しくモノ申していることに対し、皮肉としてこの言葉を放ったのでしょう。なるほど世の中には、評論家や批評家と呼ばれる人たちが数多く存在していますが、私から見ても「チョット眉唾モノ」と思えるような評論をしている方がいることも確かです。

 評論家や批評家までとはいかなくとも、何気に前述のような、すなわち「個人的見解・私的感情を、理由(屁理屈?)をつけてもっともらしく正論にしている」人は、身の回りにも多いような…。予備校講師なんていう仕事をン十年続けていると、そういう学生さんに出会うことは言わずもがな、中には一緒に働いている人間にさえ、そういう人がいたりします。人は十人十色。色々な考えや見解があるのは当たり前ですし、それ自体は何も悪いことではありません。しかし、それを「是非曲直」のオブラートに包んで差し出してしまう、つまり個人的見解・私的感情を、屁理屈つけて正論として流布することは、大いに問題ある、そして恐ろしい行為だと思うのです。個人的見解・私的感情を、それが常識的に正しいことである、それが一般的な考え方であるとして、自分の都合のいいように(すなわち個人的見解・私的感情通りに)事を運ぼうとする。規模の大小こそあれ、やっていることは独裁者やテロリストと、ほとんどと変わらないのではないでしょうか?自分の見解・私的感情は、正しいことであるから、それを流布して支持させるようにする。何とも、恐ろしい考え・行動のように思えるのです。

 「流布する」と書きましたが…。流布とは「世に広まること。広く世間に行き渡ること(大辞泉より)」とあります。自分の見解や感情を正しいものとして、世に広める…。学生さんからの相談で、何気に多いのが「あることないこと言いふらされて困っている」という相談。やはり、世の中には自分の気に入らない人物や自分の気に入らない事に対し、その人物やその事があたかも悪であるかのように、非常識極まりないことであるかのように脚色して、言いふらす人間がいることは確かなのです。さらに厄介なのは、それを聞いた時、何も知らないのに「そうなんだ」と感化されてしまう人間が何気に多いこと。私は基本的に、人づてに聞いたことは信用しません。「そういう意見もある」というデータの一つにするくらいです。実際に会って話をしてみたり、自分で事を行って確かめて判断するようにしています。悪意があろうが無かろうが、人は個人的見解・感情で判断している場合が多いからです。「その人はそうかもしれないけど、自分は違うかもしれない」というスタンスで判断するようにしています。ましてや、悪意を持って個人的見解・感情を〝正〟として流布する人もいる訳ですから、自分自身で判断するということはもの凄く大事なことだと思うのです。昨今、あまりにもそういった悪意ある、そして誰かを陥れようとした噂を、そのまま信じて行動してしまう学生さんが多いことには、正直驚かされています。

 薬剤師、または薬剤師になるべき人間が、個人的見解・私的感情を、屁理屈つけて正論として流布する。これこそ、まさに林達夫氏の言うインチキ薬剤師ではないでしょうか?自分の気に入らない事を、周りに悪く言いふらす。個人的に気に入らない人間に関して悪意ある脚色をして、それを正しいこととして知らない人に流布する。何気に日常ではよくあることかもしれませんが、厳しい言い方をすれば林達夫氏の言っているインチキ薬剤師がやっていることと同じということになります。本当にインチキな薬剤師も困ったものですが、林達夫氏が言っているようなインチキ薬剤師も、これまた困ったものです。薬剤師、または薬剤師になるべき人間は、そういったインチキ薬剤師にならないこと、そういったインチキ薬剤師に振り回されないことも、大事なことなのだと思うのです。

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