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丹精込めて作ったものが…。

 連日報道される福島原発の状況。どう贔屓目に見ても、決して良い方向に進んでいるとは言い難い状況に。

 毎日毎日変化(悪化?)する状況に、困惑しない日はありません。以前ブログでも書きましたが、何と言っても対応の遅さというか、悪さには閉口してしまいます。先日行われた質疑応答も、何ともお粗末なものでした。地元の方たちが、必死で現在の状況やこれからの対応を質問しているのに、何だかのらりくらりとかわしているというか、どこ吹く風というか…。海外メディアから叩かれている場面や、住民が怒り心頭をあらわにしている場面もよく見かけますが、至極当然のことだと思います。対応のお粗末さにも、怒るのを通り越して呆れるばかりですからね。『経済産業省原子力安全・保安院は18日午前「深さ20センチ」と発表したが、その後、見積もりに誤りがあったとして「水深が約5メートル」に訂正した』なんて、まあ、愚の骨頂というか…「本気でやってるのか?コイツら…」と思わせるような内容だと思います。

 そんな困った状況の中、さらに困ったことになっているのが〝出荷制限〟や〝出荷停止〟の措置。野菜や穀物、海産魚介類から、牛肉、牛乳まで制限や停止を受けています。制限の地域も広く、福島県だけではなく茨城県、栃木県、群馬県などが制限対象となっています(もちろん全ての農畜産物が対象となっているわけではありませんが)。今回の原発事故が、地元福島の方はもちろんのこと、福島から遠く離れている方々にもいかに多大なる被害を与えているか、ということが良く分かると思います。私の出身地は農業の方が多く、クラスの中に1~2割くらいは「実家は農業」という人がいました。もちろんクラスメイトだけではなく、知り合いには農家の方が沢山いました。今も思い出すですが、農家の方々と話をしていると、皆さん本当に楽しそうな顔で「作物を作ること」を話してくれるのです。知り合いの農家の方が「朝、俺が畑に行くとな、イモの花がみんな俺の方を向いてな、ありがとうってな、おはようってな、挨拶してくれるんだよ」とニコニコと話してくれたことを、今だに覚えています。他にもいろんな農家の方が、本当に本当に嬉しそうに〝作物が育つ嬉しさ〟を話してくれたことを覚えています。そして「美味しく食べてもらえれば」と、さらに笑顔で話していたことも覚えています。いただいた野菜が本当においしくて「いや~美味しいですね」といった時の、農家の方の笑顔は、本当に本当に極上の笑顔だったことも、脳裏に焼き付いています。

 農家の方々ばかりではありません。私の出身地は田舎というか…まあ自然が豊かだったものですから、自宅の庭で野菜や果物などを育てているご家庭をよく目にしました。もちろん私のウチでもトマトなんかを育てて、食べたりしていました。確かに嬉しかったですね、自分達が世話をしているトマトの苗がどんどん大きくなっていくのは。よそのウチでも、庭で野菜や果物の世話をしている時は、みんな笑顔で、本当に可愛がって育てているんだなという感じがしました。収穫の時はそんな嬉しさも一入。もちろん私も、大きくなったトマトを食べた時は本当に嬉しかったですし、その美味しかったことは今でも覚えています。ウチの父がそのトマトを食べて「美味いなぁ」といった時、何故か自分がほめられているような気になり、とっても嬉しかったことをまだ覚えています。

 トマトの苗2、3本でもこの嬉しさですから、農家の方の〝育てる楽しみ〟や〝美味しいと言ってもらえる喜ばしさ〟は、とてもとても大きなものなのでしょう。ところが…。今回の原発事故で、出荷制限を指示したり、出荷停止を指示したり…。農家の方々は、せっかく出荷しようと育ててきた農作物を市場に出すことが出来ない状況になってしまいました。今回の原発事故により福島県は3月26日、農作業の延期を農家に要請しました。さらに野菜に対して『摂取や出荷を差し控えるよう指示されている野菜は、すきこみ(耕運機やトラクターを使って土に混ぜること)や焼却はしない。すでに収穫したものは一箇所にまとめて保管する。まだ収穫していないものはそのまま放置すること。摂取や出荷を控えるよう指示されている野菜の作付けを予定していた場合で、播種や定植の指示が解除されない時は作付変更も検討すること』と対応策を示しました。畑で収穫を待っている野菜たち。収穫することも、すきこむこともできない野菜畑に、呆然と立ち尽くしている農家の方々の映像を見た人も多いでしょう。テレビで「せっかく育てたのにね…収穫もできないし…このまま放っておくしかないなんてね…」と泣きながら現状を訴えていた農家の方を観たときには、思わず涙が出ました。美味しいと言ってもらうために作った野菜。丹精込めて大きく育てた野菜。それがダメになっていくのをただ見ているしかない…。こんな残酷なことはないと思います。農家の方々は、作物を育つのが嬉しくて、それを美味しいと食べてもらうことが嬉しくて、農業という仕事をやってきたのですから。もちろん「育てることに、そして美味しいと喜んでもらえることに生きがいを感じている」のは農家の方々だけではありません。「美味しい牛乳を育てている」ともいえる酪農家の方々。今回の原発事故で、せっかく搾った牛乳を出荷することができていないという事態に陥りました。牛は毎日搾乳しないと病気になるそうです。ですから牛を守るために搾乳したそうです。そして、搾乳された牛乳はすべて廃棄したということです。「捨てるために搾乳しているようなもんだ」とテレビで話していた酪農家の方も忘れることができません。育てることは何にも陸の上だけではありません。今回の事故では、海に放射性物質が漏れていることが確認されました(まあ漏れてもいますし、あえて低濃度放射性物質を含む汚染水を海へ放出したりもしましたが…)。これは漁業関係者にとっては深刻な問題です。福島、茨城の漁業、養殖は大打撃だと思います。やはりここでも〝養殖〟という「育てることにそして美味しいと喜んでもらえることに生きがいを感じている」方が、悲しむ事態が起こっているということです。

 確かに出荷制限等の措置は必要だと思います。放射性物質が広まることも良くはありませんし、当然、人体への影響も十分考慮していかなければならないと思います。しかし、行政の出荷制限に関する措置には、問題があるのでは?と思っています。あまりにも不手際が多すぎますし、大ざっぱ過ぎるからです。本当に農家や酪農家、そして漁業の方々の事を考えているのか疑問に思います。それは確かに、行政としては他にも色々とやらなければいけないことはあるでしょうし、忙しいことも分かります。だからと言って、大ざっぱであっていいか、どこか一部が適当であっていいかというと、そんなことは許されるべきではないと思います。「食べ物を粗末にしてはいけない」誰もがこう教わってきたことと思います。粗末にしてはいけないからこそ、出荷制限という措置は厳密かつ慎重なものでなければならないと思います。「暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された福島県天栄村産の牛肉。実は検査に使用した容器を包んでいたビニール袋に同セシウムが付着していた」なんてことをやっているような方々に、厳密かつ慎重な判断を必要とされる出荷制限の判断が委ねられているなんて、話にならないと思います。『丹精込めて、そして美味しいという笑顔を求めて作ったものが、目の前で否定される』これがどれほどの重たいことか、行政の方々にはしっかりと認識してもらいたいと思います。

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