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原発騒動ジレンマ

 依然、不穏な空気が漂っている福島原発。千変万化するその状況に、マスコミは連日のように翻弄されている様子。「よくもこんなに多くの先生を…」と思うほどの先生方をスタジオに招き、色々な質疑応答に応じてもらっている場面を見ない日はありません。違うチャンネルでは違う先生が原発の説明をし、チャンネルを変えると…やっぱり違う先生が原発の話をしている…。私はそれを見るたびに、チョット複雑な気持ちになってしまいます。

 私の従兄(小学校から大学まで、地元の学校に通っていました)が東京の会社に配属になり、単身赴任でやってくることになりました。結婚し子供もでき、まあ一家で暮らしていたのですが…。3月の事例で東京への単身赴任が決まったそうです。実家よりも長い年月こちらに住んでいる私としましては「へえ、こっちに来るんだ」位の感覚ですが…従兄とその一家にとっては大騒ぎの事態のようです。まず、東京で暮らしたことなんかないから不安とのこと。30超えたいい男が、別に訳ないよと言ったところで、やはり不安が先行している様子。まあ、私の地元の方では、まだまだ東京という場所は敷居の高い所ですから、やはり不安なのでしょう。そして、さらにその一家にとって大騒ぎの一因になっているのが、今回の地震。以前ブログでも書きましたが、私の出身地は日本でも地震の少ない地域で、震度3でも大騒ぎする土地柄。ご存じのように、こちらではまだまだ余震が起きる状況で、そんな余震が続いている東京へ行くなんて不安がいっぱい…といったところでしょうか。「行くなんて」と書きましたが、実は従兄からその言葉を聞いてはいないのです。その言葉を聞いたのは〝従兄の親〟つまり〝私の叔父さんと叔母さん〟からなのです。ですから、正しくは「東京へ行かせるなんて不安がいっぱい」ですかね。本人はともかく、叔父さん叔母さんが今回の地震で不安になっているのは確かなようです。

 先日も、そんな伯父さん叔母さんから「よろしく頼むね」なんて電話が来たものですから、私としましては「ええ何かあったら連絡して下さい」なんて、月並みな会話をしていたのですが…。伯父さんが言うには「先日、○○(地名)まで行って4Lの水を汲んできて持たせたから、お前もいるんだったらもらえ」とのこと。「これはもしかして…」と思い「放射性物質ですか…?」と聞くと「おお、危ないらしいからよ」というので、電話ながらに苦笑いしながら「大丈夫ですよ」というと…「いやいや、危ないって」とのこと。…。やはり〝地震〟や〝原発〟による、人々への影響というのは大きいようで。東京から離れているだけに、状況も分からない訳ですからね。ましてや、マスコミも東京の現状なんてあまり報道しませんから。頭の中で、アレやコレや想像するしかないのでしょう。往々にして、そういう場合はチョット悪い方に想像を膨らませてしまうのが、世の常というもの。で「東京は地震が危ない!飲み水が危ない!放射性物質が危ない!」となったのでしょう。

 慌てる気持ちや、脅える気持ちが分からない訳ではありません。月並みな意見ですが、こういう時こそ、正しい情報を得て、正しく行動することが必要だと思います。まあ公表される〝正しい情報〟が、いささか頼りげないものであることも、確かといえば確かなんですが…。ただ私が思うのは、テレビで〝原発〟やら〝放射能〟を解説していらっしゃる先生方。皆さん、その道の権威の方でありますし、有識者としては最高峰の方たちばかりなのですが…。そういう先生方でも、一般の方に短い時間で今回の件を説明するとなると、どうしても難しい話をしてしまわなければならないのは、避けられないことのです。先生方の言動からも、四苦八苦しながら分かり易く説明しようとしていることは分かるのですが…。でも、どうですかね。お偉い先生が、聞いたこともない言葉で理解しがたい難しい話をしているとなると…分からない人は、単に脅えるだけになってしまうのではないでしょうか?お偉い先生方が難しい顔をしながら「原発のすぐそばで毎時125マイクロシーベルトと高い線量が…」なんて言ってしまうと、分からない人は「オイオイ、なんかとんでもない状況なんじゃないのか?」となってしまうと思うのですが…(まあ確かにとんでもない値なんですが〝原発のすぐそば〟の話ですからね)。

 簡単に「シーベルト」と言っていますが、これも一般の方に簡単に説明できるかというと…。私は放射線取扱主任者(2種)の資格を持っており、二十数年来に渡って、薬剤師国家試験対策で放射化学を教えています。私がシーベルトを教える時は、薬剤師国家試験に出題されるという観点から見て「こうやって覚えておいてね」と教えています。しかし、今回のような現実問題としての被ばくに関してシーベルトを説明するとなると…やはり一般の方には少々難解な言葉を用いらなければならないこともありますし、何気に時間をかけて説明しなければならないことがあるのも事実なのです。恐らくテレビ出演なさっている先生方も、そこの所を痛感なさっていることと思います。やさしい分かりやすい言葉で説明するには時間がかかってしまう。かといって、短時間で説明するには、難しい言葉を使わざるを得ない…というジレンマに陥ってしまっているんだと思います。やはりテレビは時間モノですから、後者が優先されるべき状況、すなわち「難しい言葉を使い、短時間で説明する状況」となってしまうのでしょう。で〝偉い先生方が(ジレンマに苦労するため)難しい顔で、難しいことを話す〟という状況になってしまう。そして、前述のように、それを見た視聴者の方は「なんか、とんでもないことなのか?」となってしまう訳です。悪いことに、不安は不安を呼びます。不安な状況で、他のチャンネルでも放射線に関する難しい話を聞いてしまったら…不安連鎖が止められない状況になると思います。

 私の叔父さんの「いやいや、危ないって」という発言も、この連鎖の一環なのでしょう。放射線のことなんかわからなくても、〝怖い〟ということで判断してしまう。でも、これって一番危険なんですよね。物理学者でもあり、随筆家、俳人でもあった寺田寅彦は「物事を必要以上に恐れたり、全く恐れを抱いたりしないことはたやすいが、物事を正しく恐れることは難しい」といっていますが、まさに今回の事態はこの通りだと思います。とにもかくにも慌てずに、冷静に判断してもらいたいと思っています。もちろん、そんな状況でないことも分かります。放射線なんていう、普段は関わりの無いモノ(実は常日頃から、十分関わっているんですけどね。何気に身近なものなんですよ放射線は…)が、急に身近に迫ってきたとなると落ち着いてはいられないでしょう。だからといって慌ててしまうと…もっと大変な事態になってしまうことも目に見えています。あまり先走りしすぎない方が良いと思いますよ。先走りの結果とんでもない事態を招いてしまう事の方が、よっぽど危険ですから。とはいえ、公表される〝正しい情報〟が、いささか頼りげないものであることも確かですから、どうしても慌ててしまう状況にはなってしまうのですが…これも、今回の騒動の大きなジレンマの一つですね。

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