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精一杯生きよう!

 先日、私の先輩が永眠されました。58歳という若さでした。昨年秋口から「お腹が樽の様に固くなってきている」と言い始め、色々と検査をするも原因は不明。初めは筋肉の凝りかと思ったそうですが・・・徐々に痛みを伴うようになってきたそうです。その後、入院となったのですが、この時点でもう11月になっていました。相変わらず原因は不明で、検査の毎日。私のウチから入院している病院は自転車で15分弱と近場で、さらに本当によく面倒を見てもらったので、ちょくちょくお見舞いに行っていました。初めてお見舞いに行った時なんかは、全然いつもと変わらない様子で、言葉を選びながらぎこちなく話している私に「何だかな」と突っ込んでくる状態でした。

 2回位はそんな感じだったのですが…。そのうち下痢が止まらなくなり、日々の生活にも支障きたすようになっていました。「もう、1日中トイレのことばかり考えているよ」と、文章で読むと笑えるような言葉ですが、本人はいたって深刻に話しており、私もその深刻さに返答に詰まってしまう有様。そのうち腹水がたまり…腹膜に播種性の癌が見つかりました。抗がん剤治療を始めたのですが…体力があり強くもあった先輩でしたが、見た目にも苦しんでいることが手に取るように分かりました。見舞いに行っても「今日は調子が悪いんだ」という言葉を聞く機会も多くなり「いいですよ、また来ますから」とすぐに帰ることも。そのうちに胸水がたまり始め、呼吸が出来なくなるような状態に陥ることも何度もあったそうです。あんなに気丈な先輩が「怖いんだよ…このまま死んでしまうんじゃないかっていう…死の恐怖に耐えられない…」と真顔で語っていたのは今でも忘れません。

 その後も何度かお見舞いに行ったのですが、一進一退の状態が続いていました。時には「大丈夫なんじゃないかな」と思えることも何度もありました。そして4月の二週目。お見舞いに行ったのですが、目もうつろで「もう全然ダメなんだ…」と息も絶え絶え話す状態になっていました。「いいですよ。また来ますから」といって、奥さんと少し話して引き揚げることにしました。これがその先輩との最後になってしまいました。

 訃報が来てから、仲間内と色々連絡を取り合っていたのですが…。亡くなったという実感は今一つわきませんでした。でも、その先輩のことを考えると、涙が出てきました。本当によく面倒を見てもらった先輩だったからでしょう。今でも病室で先輩が語った言葉が忘れられません。それは、まさに「死にたくない、生きていたい」という言葉だったと思います。前述の「怖いんだよ…このまま死んでしまうんじゃないかっていう…死の恐怖に耐えられない…」もそうですが、他にも「息が出来ないということがすごい恐怖なんだ」「寝てしまうと、このまま死んでしまうんじゃないかって怖いんだ」等々。最後は「癌と共存していこうと思う」とも語っていました。仕事も波に乗ってきたところで、次の仕事の話が来た時も「面白そうで、やってみたいんだ」と話していました。

 私は医療人として、先輩に何かしてあげられたのでしょうか?今でもそれを自問自答しています。何の恩返しもすることが出来なかったのではないかと・・・。ただ、一つ分かったことがあります。それは〝生きようとする人の執念〟です。月並みな言葉ではありますが、命は大切にしなくてはいけないと改めて感じました。そして、精一杯生きていかなければならないということ。その先輩は精一杯生きていたと思います。先輩と接していて「何としても生き抜いてやる」といった執念をまざまざと見せつけられた気がします。警察庁によると2011年の自殺者数は3万513人。1998年以降14年連続で3万人を超えたそうです。世の中はいたって暗いニュースばかり。生きていることに対し、不安を抱えている人の方が圧倒的に多い世の中。私にも色々な不安はあります。でも精一杯生きなければと思います。起きるか起きないか分からぬ不安に慄きながら面白くない人生を送ったり、つまらない事ばかり考えて楽しみのない人生を送ると先輩から怒られるような気がするのです。「俺はな、もっと生きて楽しいこと一杯やりたかったんだ。お前なんかまだまだ命があるじゃないか!なのになんだ、その生き方は!」と。周りがどうであろうと、状況がどうであろうと、笑って楽しく生を満喫する。「きっといい事がある」と期待に胸ふくらませ、楽しく生きる。面白い事を考えて、やりたいことをやる人生を送る。そうやって生を満喫して、精一杯生きる。これが生きている人間の定めである。それが、先輩が最後に教えてくれた、そして残して行ってくれた遺産だと私は思っています。

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